湯之奥をはじめ天子山地各地には石英脈が分布していて古くから金鉱石として採取されてきた。石英脈は白色の石英を主とし少量の黄鉄鉱を伴い、金を含んでいる。ただし、金粒の大きさは肉眼では見分けられない程、微細である。
 中山・内山・茅小屋の金山で採掘された鉱石の多くは山の尾根に露出していたもので、全体に褐色を呈している。これは風化作用によって鉱石中の硫化物(黄鉄鉱)が酸化されて、黄褐色の水酸化鉄(針鉄鉱)に変わっているためである。地表の鉱石が採掘されたほか、坑道を開いて地表近くの酸化した鉱石や粘土質の鉱脈も採掘されている。内山の沢で転石として見つかった鉱石には塊状の磁硫鉄鉱からなるものがあり、表面は酸化して褐色の水酸化鉄になっている。
 金の品位(含有率)が低かったために採掘されなかった鉱石が、地表や坑道に残されている。これを分析してみると鉱石1トンあたり4〜7gの金と1〜3gの銀が含まれている。かつて採掘された地表付近の風化帯の鉱石には、1トン中に数十gから100g程度の金が含まれていたと推定される。
 本地域の金鉱石を佐渡金山など日本の多くの金・銀山の鉱石と比べると、幾分金粒が大きいこと、金に対し銀の割合が少ないことが特徴である。鉱脈は脈幅数10cmから1mで、母岩は強く珪化している。鉱脈の母岩は中期中新世の火山岩類で、変質して緑色となっている。一部には暗灰色の硬い塊状泥岩がある。湯之奥之金山地域の南部には、これらの火山岩・泥岩を貫く石英閃緑岩の岩脈や岩株(深成岩に貫入した小規模な岩塊)があり、貫入岩の周囲は熱変成を受けて、黒雲母ホルンフェルスとなっている。含金石英脈は、こうした花崗岩類の貫入と密接な関連を持って生成したものである。
 山梨県と周辺地域に多数分布する金鉱脈の成因も同様である。例えば、黒川金山の鉱脈は花崗岩類を母岩とする含金石英脈で黄鉄鉱や磁硫鉄鉱などの硫化物を伴う。また、富士川谷西側の身延山地には富士川の支流にあたる早川と雨畑川に沿って含金石英脈が南北方向に点在する。鉱脈の分布は、更に南方の静岡県に入って安倍川上流の梅ヶ島の金山にまで連なる。鉱脈は単純な石英脈で、伴う硫化物は少量である。この地域には、北部で小規模な閃緑斑岩の岩脈が認められるにすぎないが、南北方向に伸びた花崗岩質貫入岩体が地下に 潜在していると推定される。




前へ戻る
トップページへ戻る